結論
特許は「守る」だけでなく、『ライセンス』で事業を伸ばす前提に置くと、中小企業でも海外展開を現実的に進めやすくなります。
- ポイント1:海外は『ライセンス』で伸ばす、と決める
- ポイント2:『権利化』と『ノウハウ秘匿』の線引きを決める
- ポイント3:『権利化する国』は顧客の動きで決める

※本記事は公表されている事例に基づく一般的な整理の考え方です。個別事情により最適解は変わることがあります。
中小企業が特許を取るとき、いちばん多いのは「取った後、どう使うか」で止まるパターンです。
海外展開まで考えると、なおさらです。
拠点、設備、採用、現地対応。
全部を自社で抱えるのは重い。
でも、技術は欲しがられます。
だから怖いのは模倣です。
「見せたら終わり」にならない形が必要になります。
ここで紹介するのは、特許庁の事例集に載っている『日本省力機械株式会社(群馬県伊勢崎市、従業員約40名)』の実例です。
同社は、特許を“権利の話”で終わらせず、事業の形そのものに組み込んでいます。
上のポイント3点の順で整理します。
ポイント1:海外は『ライセンス』で伸ばす、と決める
日本省力機械は、「単独で海外展開しようとすると、リソース不足で設備投資が難しく、投資回収にも時間がかかる」という前提をはっきり置いています。
そこで、海外で自社技術を使いたい企業に『ライセンス』するビジネスを行っています。
実際、海外事業は「基本的にパートナー企業が現地で製造し、工法に係る特許はライセンス料を受領する」形にしています。
ここが一番の分岐点です。
「海外に行く=自社で売る」ではありません。
最初から『ライセンス』という勝ち筋を選んでいます。
実務的には、まずここを決めておくのが一番効きます。
海外を「販売」で取りに行くのか。
それとも『ライセンス』で取りに行くのか。
ここが決まると、出願の設計がブレにくくなります。
ポイント2:『権利化』と『ノウハウ秘匿』の線引きを決める
この事例の“実務の匂い”が濃いのは、ここです。
同社は「技術は物理的にわかりやすいものが多い」としつつ、特許出願を念頭に置きながら、一部は意図的に『ノウハウ』として秘匿管理しています。
海外で模倣されたときに、すべて持っていかれないようにするためです。
さらに、新技術を『権利化』するか『ノウハウ管理』にするかは、社長・技術担当・弁理士で議論して決める、とされています。
ここは、そのまま型にできます。
最初から「全部特許」「全部秘匿」と決めない。
事業の方針に合わせて、線を引く。
この線引きができると、「どこまで見せていいか」が整理されます。
結果として、提携やライセンスの話も進めやすくなります。
ポイント3:『権利化する国』は顧客の動きで決める
海外出願は、やればやるほどコストが増えます。
だから「どの国を取るか」を決める軸が必要です。
日本省力機械は、出願国の検討にあたり、国内ユーザー企業の『海外進出動向』を考慮するとしています。
例えば「ユーザー企業が海外で工場を新設する動きがあれば、その国での権利化を考える」という考え方です。
中小企業にとって、これはかなり現実的です。
「市場が大きいから」よりも、「顧客がそこに行くから」の方が判断しやすいからです。
加えて、海外の新しいライセンス先を探すときに、商社やJETROの情報収集支援を活用した、という記載もあります。
“勝てる国”を、事業側の情報で決めている。
ここが強いです。
まとめ
日本省力機械の実例は、海外展開を『ライセンス』で設計し、現地製造はパートナーに任せてライセンス料を得る形にすることで、リソース制約の中でも事業を前に進めています。
そのうえで、技術の全部を開示しないために『権利化』と『ノウハウ秘匿』を線引きし、出願国も顧客の海外進出に合わせて選んでいます。
まず整理するのは、「海外は販売かライセンスか」「権利化と秘匿の線」「狙う国の優先順位」の3つです。